経筋(けいきん)あれこれ
線維筋痛症は針灸治療で治せる 西田皓一著 たにぐち書店 2008年
「東洋医学から見ると線維筋痛症の原因は「経筋病」であるので、経絡の考え方特に経筋(東洋医学から見た筋肉学)と、それに若干の東洋医学の「臓腑学」を考えにいれると、これらの症状はすべて説明がつき、十二経筋上の経筋病巣(筋肉の中に出来た病巣)に針灸治療をしてやると症状は消失または軽減する。」 12ページ
経筋は鍼灸の古典である霊枢(経筋篇十三、紀元前200年~紀元後220年頃)に記載されています。手足の末端から始まる縦につらなる筋(筋肉)の流れ(十二本)として示されています。
「霊枢概要」神麹斎(左合昌美)著 ヒューマンワールド には
「そもそも「筋」とは何か。古代医書中にあっては極めて含意が広い。筋腱、肌肉、静脈、神経などがいずれも筋と呼ばれていた。つまり上下に連なる紐ないし帯状の組織の連なりはすべて筋系と言える。」86ページ
筋肉だけを指すのではなく腱、靭帯、血管、神経なども含めた複数の筋の連なり、流れとして捉えていたようです。
そして、この経筋の病に対する治療法として霊枢には「焼き鍼(燔鍼・はんしん)を使い速刺速抜(速い抜き刺し・劫刺・こうし)で効果が出るまで刺す(以知為数)」また「痛をもって輸(兪・ツボ)となす(以痛為輸)」と記載されています。
焼き針(燔鍼・火鍼)は針先を火であぶり熱して刺す方法です。
痛をもって(痛いところ)は自覚的または他覚的(押して痛い)の両方でしょうか。他覚的に痛いところは阿是穴(あぜけつ)とも呼ばれています。
痛みのあるところや、想定される流れのルートから圧痛部(押して痛いところ)を探し鍼やお灸をすえるという方法は鍼灸治療の原点を思わせる方法です。
「霊枢概要」神麹斎(左合昌美)著(ヒューマンワールド)
「経筋の主要な治療手段が燔鍼劫刺であると言っても、経筋治療のはじめからそうであったとは考えにくい。馬王堆脈書において、足臂十一脈では灸というが、陰陽十一脈には実は灸とは指示されていないことを記憶すべきであろう。つまり足臂十一脈が発展して経筋となり、熱療法としての灸を改良して燔針劫刺としたのかも知れない。」86ページ
足臂十一脈と経筋篇は共にすべて四肢末端から体幹に向かうルートになっています(陰陽十一脈は二本のルートが逆方向)。霊枢の中のいくつかの篇にも「「五輸穴」など末端から肘膝に向かうルートや十一本のままのものも残っています。
「改訂版 東洋医学のきほん帳」 伊藤剛著 Gakken
「最近、西洋医学の分野で、マイヤースによる筋筋膜経線(アナトミートレイン)という考え方が提示されています。筋筋膜経線とは、骨格周囲につく筋筋膜により緊張と運動を伝達する張力のひものようなものです。~中略~ そして、驚くことに、この筋筋膜経線で示された筋肉のつながりは、経筋で示されたものとほぼ同じなのです。二千年以上も昔、解剖学も生理学も発達していない時代に、経筋という身体のシステムを発見していたことになります。」 124ページ
アナトミートレイン=経筋かという問題は置いといて、最近はファシアというのも経絡の正体ではと話題になっていました。さらに数年前に騒がれていたトリガーポイントは痛をもってツボとなす(以痛為輸)阿是穴の考えと同じです。
二千年以上前の古代人の知恵が今の発見と少しずつ繋がって来たのでしょうか…。
参考文献 古典から学ぶ経絡の流れ 浅川要著 東洋学術出版社