線維筋痛症の診断と針灸治療 西田皓一著 ヒューマンワールド 2012年
著者は高知県にある西田順天堂内科の先生です。
治療は疼痛治療薬(プレガバリン)や抗うつ薬(うつ症状の改善目的ではなく痛みの緩和のため)、睡眠薬などで、原因が不明の病気であることから根治のための治療法は残念ながらまだ無いそうです。
線維筋痛症の原因はまだよく分かっていませんが、痛みを脊髄から脳に伝える経路(上行性経路)の興奮、さらに脳から脊髄を下り痛みを抑える経路(下行性疼痛抑制機構)に障害が起こることにより、痛みの感度が増幅されてしまう(痛みの中枢性感作)ことが原因と考えられているそうです。
ちなみに鍼灸によるその他の鎮痛メカニズムには、脳からモルヒネ様物質(エンドルフィン、エンケフェリンなど)が分泌されたり(神経伝達物質性疼痛抑制機構)、血管を拡張させ発痛物質の停滞を解消させる…などがあります。
線維筋痛症は今も原因が不明とされている難病です。
その症状は広範囲の疼痛、こわばりと多彩な随伴症状がみられることが特徴です。
随伴症状には、全身症状(疲労感、倦怠感、微熱、寒さ、動悸、めまい、ほてり、しびれ)、うつなど精神神経的な症状(不安感、睡眠障害など)、頭痛、乾燥(眼や口)、胃腸症状などがあります。
西洋医学と東洋医学を併用されている著者からすると
「線維筋痛症の場合、あらゆる治療にも治療効果が見られないが、針灸治療することによって即座に患者に治療効果が得られる。」 26ページ
西洋医学の治療では効果が見られないが、鍼灸治療により効果の得られる疾患ということです。
「東洋医学独自の治療手段があり、効果機序が違っている。だから現代医学では難病であっても、東洋医学の治療手段で病気を治すことができるのである。」 13ページ
本書では線維筋痛症を東洋医学(中医学)の考え方にある「経筋病」と捉えて治療されています。
中医学(現代中医学)では経筋は経絡(けいらく)の概念の中の一つで、経絡の中の経脈が養う筋肉系統と考えられています(諸説あり)。鍼灸の古典である霊枢(れいすう、紀元前200年~紀元220年頃)には十二本の流れの経路や治療法などについての記載があります。
「東洋医学から見ると、難病を起こす病因には、瘀血、寒、湿、虚、気(精神的緊張)などがある。これらの概念は現代医学にはなく、またそれらの病態を知る診断手段もなく、その上にこれらの病態を治す治療手段もない。だから現代医学では治らない病気を、東洋医学の治療手段で治すことができるのである。」 15ページ
著者の永年の観察によると線維筋痛症は精神的なストレスが誘因となって起こっているそうです。
精神的緊張、ストレス(内因・七情)→ 気の鬱滞 → 経絡の停滞 → 気・血・水の巡りが悪くなり痛みが起こる(不通則痛)→ 鍼灸(霊枢・経筋篇では燔鍼・焼き鍼のこと) → 気血が巡り、痛みが去る(通則不通)
また線維筋痛症と慢性疲労症候群は病名は違っているが、どちらも同じ経筋病にあてはまるそうです。
線維筋痛症(強い筋肉痛、とくに頚背部に硬直、痛み)
慢性疲労症候群(全身の倦怠感、筋肉の機能低下)
霊枢・経筋篇には(霊枢 新釈 小曽戸丈雄著 たにぐち書店 より)
「一般に経筋の病は、寒によっておこったものは、そりかえって筋が痙攣する。熱によっておこったものは、筋が弛緩して収縮しなくなる。 ~中略~ これらの治療に焼針を用いるのは寒邪によって経筋がひきつれたものを治すのが目的である。従って、もし熱邪によって経筋が弛緩し収縮できなくなったものには、焼針を用いてはいけない。」
と寒・熱による症状の違いと治療法の適不適についての説明があります。
線維筋痛症の原因はまだよく分かっていませんが、痛みを脊髄から脳に伝える経路(上行性経路)の興奮、さらに脳から脊髄を下り痛みを抑える経路(下行性疼痛抑制機構)に障害が起こることにより、痛みの感度が増幅されてしまう(痛みの中枢性感作)ことが原因と考えられているそうです。
線維筋痛症の患者に疼痛緩和の目的で処方されている抗うつ薬はこの下行性疼痛抑制系(ノルアドレナリンやセロトニンの増加)に働きかけ痛みを抑えるものです。
実は鍼灸の刺激によっても、痛みが脊髄から脳に伝わるのを抑制したり(上行性疼痛抑制機構)、さらに脳から脊髄に下行し痛みの伝達を抑制する働きを賦活させる(下行性疼痛抑制機構)ことが科学的に解明されています。
ちなみに鍼灸によるその他の鎮痛メカニズムには、脳からモルヒネ様物質(エンドルフィン、エンケフェリンなど)が分泌されたり(神経伝達物質性疼痛抑制機構)、血管を拡張させ発痛物質の停滞を解消させる…などがあります。