2025年4月19日土曜日

呼吸について


すべての不調は呼吸が原因 本間生夫著 2018年 幻冬舎新書

興味深い内容でした。

呼吸というと「腹式呼吸で酸素をたくさん取り入れる」とよいというイメージがありますが、意識的な腹式呼吸よりも、通常の無意識に行われている胸式呼吸を強化することが大切で、酸素よりむしろ二酸化炭素が重要…といった内容です。

以下は気になったポイントを簡単にまとめました。

〇 年齢などにより肺の機能が落ちると機能的残気量が増え(通常の呼吸で息を吐き切った時に肺に残る空気量、ただ多少の残気量は必要)入る空気量が減ると代謝などが低下する。

〇 呼吸筋は20種類以上あり、呼吸の維持遂行のメインの働きをしているのは胸部の筋肉で、その中心が肋間筋(吸・外肋間筋 吐・内肋間筋)で補助として横隔膜がある。横隔膜は胸の呼吸筋により調整されている脇役。

〇 腹式呼吸で強調される横隔膜は肺を縮めるための呼吸筋ではないので機能的残気量を減らすことには役立たない。ただし意識的な深呼吸も気分転換に1、2回行うのは良い。

〇 深呼吸しても体内に取り入れられる酸素量は増えない。血中酸素飽和度(酸素とヘモグロビンが結びつく)は肺胞の段階で97%飽和してしまっている。

〇 呼吸は酸素よりもむしろ二酸化炭素(PH、酸・アルカリのバランスの調整役)が大切
。ダイバーなど酸素過多でも弊害が起こる。この二酸化炭素の調整システムは無意識の呼吸の時に行われ、意識して行う呼吸の時は作動しない。

〇 日常の呼吸は胸筋を使って無意識に行われているので、トレーニングも腹式呼吸で強調される横隔膜などよりも、無意識の胸式呼吸の時に使われる胸筋のストレッチや有酸素運動が有効。

〇 鼻呼吸(防塵、防ウイルス・細菌、肺を冷やさないなど)が大切。

〇 呼吸の分類 呼吸の種類により使われる脳の部分が異なる。

①代謝性呼吸(無意識・脳幹 生命維持、コントロール)
②情動性呼吸(無意識・感情 情動、大脳辺縁系(記憶)の中の偏桃体、情動を司る)
③随意呼吸(意識的・大脳皮質 意思 思考 判断 運動 感覚など)

①は日常の呼吸②は感情に伴って変化する呼吸③は腹式呼吸など。①②の無意識に行われる呼吸筋をトレーニングする事で、日常の呼吸を深くゆったりすことができる。

〇 呼吸は自律神経がコントロールしてるので、自律神経も整えることもできる。

〇 呼吸を安定させると情動(情動性呼吸)も安定させることができる。

〇 赤筋である肋間筋を鍛えるのは、パワー系の筋トレでなく有酸素運動が有効。

〇 トレーニング法 ごく簡潔に。

①胸を張り、背筋を伸ばし姿勢をよくする。 胸郭が広がる
②呼吸筋をやわらかくするストレッチ。 胸郭が大きく動く
③長く声を出したり、歌う。 大きく長い息を吐ける
④息を吐き切るトレーニング。  ストレッチ効果と吐く力 吹き矢
⑤有酸素運動、持久運動。 どの有酸素運動でも良いがお勧めはウオーキング

〇 ゆったりした呼吸は人にうつり、周りの人もリラックスさせることができる。


といった感じでした。呼吸は健康を考えるとき食事や睡眠より以前に大切な要素ですが、一般的には蔑ろにされがちです。

呼吸を鍛えるには腹式呼吸よりも、無意識の日常の呼吸で使われる胸部の筋肉を鍛えるのが大切とのことです。

古来から行われている、いわゆる丹田を意識した腹式呼吸などは別の目的、効果を狙っていたのでしょうか…。

本書に紹介されている具体的なトレーニング法は、胸筋のみ個別に鍛えられる方法は無く、胸を中心とした広い範囲のストレッチやウオーキングなどの全身的な有酸素運動、発声などがメインになっています。

腹式呼吸にも色々なやり方がありそうですが、腹部まで全体を連携させ動かすことで、結果として無意識の呼吸で使われる胸筋などをより有効に働かせることに繋がっているものもあるかもしれません。

こういった無意識の呼吸を鍛える方法はヨガや導引(気功)など伝統的な技法の中にも優れたものがありそうですね。

また仏教に伝わる数息観(出入りする息の数をコントロールせず数える。ただこれも色々なやり方があるかもしれませんが)などは意識と無意識の両面に同時に関わると思われるので、脳のどの部分が使われるのか、心身への影響も含めて興味深いです。