針灸史
針灸の歴史 悠久の東洋医術 小曽戸洋・天野陽介著 2015年 大修館書店
針灸の歴史について、主に「書誌」を中心にまとめられている本です。この本も色々と貴重な情報が多かったです。
日本の漢方医学(漢方薬、針灸)は、西洋医学が導入された明治時代に危機がありましたが、有志らの働きかけにより何とか存続し現在に繋がっています。
清代(1636年~)の後期には針灸廃絶政策が実施され針灸は壊滅状態になりました。その後の中華民国(1912年~)政府による中医廃止令で湯液(中医薬)も含めた伝統医学はさらなる壊滅、低迷状態が続きます。
この後に中国は国家主導で新たに「中医学(現代中医学)」(1970年末頃からか)を創り始めます。
この新たに創られた中医学の問題は以前にも書きました。
https://ohisama-hari.blogspot.com/2022/01/blog-post_22.html
https://ohisama-hari.blogspot.com/2022/10/354p-10-20-69-13-p-1970-1516p.html
中国大陸で中国医学が低迷状態となった清代から現代中医学が作られるまでの時代を支えたのは、実は日本からの情報や日本の漢方、鍼灸書籍だったようです…
この期間に中国では既に失われた貴重な文献や、日本人著者による多くの漢方・針灸書が中国に渡り出版もされていたそうです。
「中医針灸の成立には近代日本の針灸書の存在が深く関わっているのである。著者小曽戸もかつて先達の岡部素道、間中善雄先生らから直接・間接にその旨うかがったことがある。」 164P
これは中国にとって隠しておきたい秘密のひとつでしょうか。
「中医学」という言葉自体が曖昧に使われている面がありますが、今わかる範囲でこの中医学の成立過程をまとめると
〇中医学(現代中医学)とは中国政府主導(1970年末頃からか)で新たに創出されたもの。
〇中西医学統合(中国医学・西洋医学)を目指した時に創られた中医薬(湯液・漢方薬)の理論(弁証論治)を中心に編纂。
〇鍼灸もこの中医薬の理論にそのまま組み込まれている。
〇現在もその編纂の経緯や典拠は示されていない。
〇その成立過程には日本の漢方・鍼灸書が深く関わっている。
という感じでしょうか。
現在、日本の針灸学校の教科書は、この中医学の影響が年々強くなってきているようです。学生にとってわかりやすく纏まってるわけでもなく(むしろ理解しにくいのでは?)、他の針灸療法と比べて著しく効果が高いという事もありません。しかもこの中医学とは何かも示されないままにです…。
「最近グローバルという言葉が流行っているが、文化においてグローバル化がその保持や発展につながるとは思えない。むしろ逆行する動きであろう。固有の文化は多様化の結果であり、一様化されればそれは文化とはいえまい。」7P
あらゆる分野でグローバル化が急激に進められている今こそ、日本の伝統に根差した鍼灸の教科書作りと教育を大切にして欲しいですね。