張力
武術と医術 人を活かすメソット 甲野善紀 小池弘人著 集英社新書 2013年
武術研究者の甲野善紀先生と小池統合医療クリニック(新宿区)院長の小池弘人先生の対談本です。
小池 …テンセグリティとは、「張力による統合」を意味する用語で、「誰もがその名を知っている現代アメリカの天才」と称された異色の科学者であり哲学者R・バックミンスター・フラーにより提唱された構造です。 P.74
テンセグリティのモデルは材料だけ見たら棒が六本とひもが一本だけですが、それが強靭な立体構造となります。つまり、材料を組み合わせると、それとは思えない強度が生まれるわけです。 P.75
実際、「〇〇が痛い」という時、そこに走る経絡に張力をかけてみる、つまりツボなどを押してみると、そうした痛みがなくなることも少なくありません。
そういう手法が効くということは、やはり張力の問題だと思うのです。人間が生きているという中で生まれる張力であれば、いくら組織を分解しようが電子顕微鏡を使おうが見えてこないのが当たり前です。
しかも、それに加えてツボについても考えると、人によって場所がちょっとずつ違うし、日によって大きく変わるといわれます。それと経絡をあわせて考えて、その人の健康状態を捉えるならば、どこか部分一つを取り出して検出するという方法論ではなかなか困難です。 P.76
このテンセグリティについては 「日本鍼灸のまなざし」ヒューマンワールド 松田公博著 の中にも出ていました。
医師・医学博士 向野義人先生
「僕は「Tensegrity」(テンセグリティ)」という考え方が好きです。Tension(緊張)がIntegrity(統合)されているという考え方。この概念を生物に応用したイングバー博士は細胞レベルで、細胞をを歪めると代謝が変わるということを見出しています。つまり、細胞の形が生化学反応を制御している。彼は身体全体も同じようになっているらしいと推測しています。人が人として維持されているのは、細胞レベルから身体全体に及ぶまでテンションがうまく全体のバランスをとっているためだ。だからちょっと触れてそこのテンションが少し変わるだけで、全身に影響が及ぶ」
「皮膚でも同じような(テンセグリティの)現象が見られます。裸になってもらって、首を横に倒したり、前に倒したりすると皮膚も一緒に滑るように動くのですが、動きに制限を受けている人の場合は、皮膚の動きが留まるところを見つけられます。本来は皮膚がすべっていくところが、留まっている。そこを鍼などで刺激を入れると、首の動きの制限がとれると同時にその部位の皮膚が伸びる。だから、皮膚は全部つながっていて、そのつながりのなかで、経絡というのは特別な情報伝達の柱になってるのかな、という感じはしますよね。間中喜雄先生はX信号系と言っていますが」 125~126ページ
この向野先生の「全身がつながり連動している」という考え方は操体法の創始者で医師の橋本敬三博士(1897~1993)の影響があるそうです。 124ページ 下段の注意書き
「張力による統合」バランスのとれた立体構造と経絡、ツボの関係への発想は面白いですね。