鍼と禅 横田観風著 春秋社 2019年
「「湯液」とは、いわゆる漢方薬のことです。「湯液」も「鍼」も三千年以上もの歴史があるといわれており、各時代に多くの理論体系や流派が誕生しており、どれか一つに定まったものなど何もないといってもよいほどです。
そんな中で古来からお手本とされてきたのが、「湯液」では後漢の張仲景の原著に由来する『傷寒論』『金匱要略』であり、「鍼灸」では中国最古の医学者であり伝説上の皇帝である黄帝を尊び黄帝内経の名を冠している『素問』『霊枢』『難行』です。
これらは理論体系が異なるので、同一次元で考えたり扱ったりできないのが悩みの種でした。
しかし江戸時代に入り「湯液」では日本古方漢方の祖、吉益東洞が臨床による親試実験の観察から「万病一毒」説を唱え、少し遅れて「鍼」では葦原検校が「万病一邪」説を唱え、それによって煩雑な論理体系の違いを越えるチャンスができたのです。」 P.35
「「万病一風」というのは全ての病は風が起こることにより生じ、風が静まってなくなればなくなれば治るという意味です。」 P.8
「私の考えというか感覚では、鍼は人体にとって異物の一面があるので、鍼を刺入すると人体生命が危険を察知し、これを排除しようといっせいにはたらき出し、気の還流が盛んになり、そのために治癒力が増すのだろうと思っているのです。」 P.76
漢方の吉益東洞「万病一毒」説と、鍼灸の葦原検校「万病一邪」説から、鍼灸と禅の体験を重ねられた横田先生(1944年生)が新たに「万病一風」説を提唱され、邪気や毒のありか、寒熱、虚実の状態を観て一鍼を下す独自の治療法をされているそうです。