三焦あれこれ①
三焦は五蔵六府の六府(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)にあります。
五蔵にある心包も含めてこれが何かは現在も諸説あります。
改訂版 いちばんわかる 東洋医学のきほん帳 伊藤剛著 Gakken 2024年
「心包は壇中とも呼ばれることから、心嚢や胸膜の一部のようなもの、三焦は膵臓機能などの内分泌機能を合わせたものと推測されています。」 34ページ
「しかしどちらも現実にある内臓をはっきりと特定できるものではなく、ある意味では数を「六」にするためにつくられた機能を表す用語とも考えられます。」 34ページ
五蔵六府に含まれていない膵臓が三焦にあたるのではないかという説があります。
またリンパや腹膜説などもあるようです。
さらにそ、そもそも数合わせ(六臓六腑)のために創られたのではという説もあります。
下記の参考文献をもとに古典である黄帝内経(素問・霊枢)から三焦の変遷についてまとめました。
変遷
①「三焦膀胱」と言う単独の泌尿器。三焦(収縮・出す)膀胱(膨張・貯める)。
②「膀胱」と「三焦」に分離。膀胱に属す。
③上焦・中焦・三焦(下焦)の三セットの一部に。
④上焦・中焦・下焦のすべてが三焦に。霊枢または太素、難経から。
⑤機能の不明確な名称だけの蔵府に。難経から。
〇十二経脈の三焦は十二蔵府のひとつとされるが泌尿器に関する病証がない。
⑤機能の不明確な名称だけの蔵府に。難経から。
〇十二経脈の三焦は十二蔵府のひとつとされるが泌尿器に関する病証がない。
素問、霊枢から抜き出します(番号は変遷にあてはまるもの)
①腎は三焦膀胱に合す。三焦膀胱は外で腠理毫毛の応。 霊枢・本蔵
①腎は三焦膀胱に合す。三焦膀胱は外で腠理毫毛の応。 霊枢・本蔵
肺は大腸、心は小腸、肝は胆、脾は胃、腎は三焦膀胱に合すとなっています(五蔵五府)。
②少陽(太素、甲乙経では少陰)は腎に属し腎は肺に上で連なる。故に両蔵をひきいる。三焦なる者は中瀆(夬瀆)の府、水道ここより出づ。膀胱に属す。是れ孤の府なり。 霊枢・本輸
少陰の方がしっくり来ます。肺は大腸、心は小腸、肝は胆、脾は胃、腎は膀胱に合すと、五臓と五腑が綺麗に収まっている中で、余った三焦は膀胱に属されて、さらに孤の府とされています(五蔵六府)。
②三焦なる者は決瀆の官、水道ここより出づ。 素問・霊蘭秘典論
五蔵六府の壇中(心包)が加わり各々の働きについて説明されています。膀胱は津液を蔵す、気化すれば則ち能く出ず、三焦は水道ここより出ずとなっています(六蔵六府)。
③下焦、溢るれば水(水腫)をなす、膀胱利せざれば癃(小便不通)をなし、約せざれば遺尿をなす 素問・宣明五気篇
③三焦は気を出して、肌肉を温め、皮膚を充し、其の津(陽・衛気)となす。その流まりて(溜まって)いかざる者は液(陰・営気)という。 霊枢・五癃津液別
③④営は中焦より出て、衛は下焦より出ず(上焦か) 霊枢・営衛生会
上焦(全身を周還する衛気の生成)、中焦(経脈を行く営気の生成)
③④下焦なる者は、廻腸に別れ、膀胱に注ぎて滲み入る。糟粕は大腸に下りて、下焦に成る。濾過して膀胱に滲み入る。 霊枢・営衛生会
下焦(膀胱と共に小便の排泄・三焦は下焦に名称変更)
③④上焦は霧の如く、中焦は漚(水に浸す)の如く、下焦は瀆(水道)の如し 霊枢・営衛生会
〇三焦の病は腹気満ち、小腹(下腹)尤も堅く、小便を得ず。…侯は足太陽の外の大絡に在り、大絡は太陽小陽の間に在り。また脈に見る。委陽に取る。 霊枢・邪気臓腑病形
三焦の病(排尿困難)に足太陽膀胱経の経穴(下合穴)を取っています。
よくわかる黄帝内経の基本としくみ 左合昌美著 秀和システム 2008年
「『黄帝内経』の中ではもともと、膀胱と同様に「水分代謝をつかさどる府」とされています。ただ、この三焦という言葉には「上中下の三つの焦を合わせて三焦」という使われ方があって、ややこしい。上焦からは衛気が出、中焦からは営気が出、下焦からは排泄されるべき水分が出るとされます。「水分代謝をつかさどる府」としての三焦は、この下焦のことのようです。ところが後世、三焦は学者たちにより次第に機能がつけ加えられ、しかも「三焦はそうした機能を総合した抽象的な概念であって、三焦という臓器があるわけではない」などといわれ出して、実は治療家や研究者の間でも侃々諤々です。でも、とりあえず知っておくべきは原初の概念です。」 46ページ
一つの府であった三焦(排尿)と膀胱(畜尿)を分離させた目的は何でしょうか。
霊枢・本輸篇や本蔵篇は六蔵六府説より古い段階(五蔵五府・五蔵六府)で書かれているようです。
五蔵五府から五蔵六府、六蔵六府への変遷は、蔵府や働きが発見され増えたのでしょうか、それとも経脈(十一脈、十二脈)に対応させ理論の整合性を取る為でしょうか。
身体を三つに分けてとらえる概念(三才思想からか)が生まれ、三焦と膀胱は下焦にあてられます。分離されましたが働きは同じままでした。
霊枢・営衛生会、もしくは太素、難経で上焦・中焦・下焦のすべてが三焦となります。
下焦だけの三焦と上・中・下の三セットの三焦をどちらも三焦と呼んだ可能性もあるのでしょうか。
難経ではここからさらに働きも増え、特別扱いされていきます。
ここまで原初の姿をまとめました。次回は後世にあたる難経からです。
参考文献
公益社団法人 大阪鍼灸師会HP 素問霊枢報告 篠原孝市
営衛と両焦三焦概念の変遷についての考察 日本内経医学会 林孝信
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F11497722&contentNo=1
『素問』『霊枢』における三焦概念の変遷 日本内経医学会 林孝信
http://jshm.or.jp/journal/56-2/56-2_226.pdf
人体で繰り広げられる表裏の関係 篠原孝市公益社団法人 大阪鍼灸師会HP 素問霊枢報告 篠原孝市
中国医学の身体論 古典から紐解く形体 浅川要 東洋学術出版社 2022年
改訂版 いちばんわかる 東洋医学のきほん帳 伊藤剛著 Gakken 2024年