2025年1月31日金曜日

感情

やさしい鍼を打つための本 中根一著 医道の日本社 2013年

「東洋医学が内因論を基礎としている理由や、多少の乱れがあっても必ず安定的に自律する陰陽消長を基本概念に据えていること、心だけがポジティブな五志である理由や、刺鍼の「刺」という意味が「チクリとする」という感覚を示しているということ、脈を診る理由や脈を整える理由、そして心身一如である理由も、ようやく見えてきましたね?」56ページ


中国医学では病気になる原因を、外因(気候など環境の影響や感染症)内因(感情)その他の不内外因(飲食、運動、睡眠など日常生活と不測の傷害)の三因から生まれると捉えています。

この考え方は儒教の経典である「周礼」(しゅうらい・前8~11世紀・諸説あり)から中国医学の原点といわれる「黄帝内経」(こうていだいけい・前2から5世紀)に引き継がれ発展し、宗代の「三因極一病証方論」(1174年)で三因論が唱えられました

内因の感情は七情(怒・喜・思・悲・憂・恐・驚)とされ、臓腑の五行との関係から五志(怒 ・喜 ・思 ・憂 ・恐 )に分類されています。

素問(黄帝内経)・陰陽応象大論篇に

天に四時(四季)・五行(木火土金水)あり、以て(四時に対応して)生長収蔵し、以て(五行に対応して)寒暑燥湿風(の気候)を生ず。

人に五蔵(心・肝・牌・肺・腎)有りて、五気(五蔵の気)と化し、以て喜怒悲憂恐(の精神活動)を生ず。

喜怒(などの喜怒悲憂恐の五種類の精神活動)は気を傷り、寒暑(などの寒暑燥湿風の気侯)は形(形体)を傷る。

暴(過度の)怒は陰を傷り、暴(過度の)喜は陽を傷る。

厥氣(逆行する気)が上行し脈(経脈)を満たし(充満し塞ぎ)形(肉体)を去る(離脱する)。

喜怒(などの喜怒悲憂恐の五種類の精神活動)が節制されず、寒暑(などの寒暑燥湿風の気侯)が度を過ぎれば、生(生命)は乃ち固からず(守られない)。

重陰(陰が極まること)は転化して必ず陽となり、重陽(陽が極まること)は転化して必ず陰となる。


とあります。


本書では経絡治療で心虚証の無い理由を、五志の中で心は喜という唯一ポジティブな感情であること考え説明されています。また脈診については、海外の心理学者による研究結果と合わせて解説されていました。


参考文献 

いちばんわかる!東洋医学のきほん帳 改訂版 伊藤剛著 Gakken 2024年

黄帝内経素問序説 西村甲編著 三和書籍 2021年